「ここがイスピーナ丘陵かぁ」 「はい。新参の魔物使いが、必ず向かう場所なんですよ」 前回の反省を生かし、道に迷わないようにしようと 魔物使いの一行に着いてきて正解だった。 「そこまで強い魔物たちがいるわけでもないので、歩きやすいんです」 「そうなんだ、それなら…」 この先は迷うこともないかなと、魔物使い達に別れを告げて丘陵一帯を歩いてみる。 穏やかな風にそよぐ色とりどりの花に、 岩肌と新緑のコントラストが美しい、遥か続く曲線の丘。 何だか散歩にでも来たような気分にすらなる程に、その景色は美しい。 「♪♪♪~」 口笛を吹きつつ丘を登っていたその時―― 「やめて、来ないでってば!」 岩陰の向こうに幼い少女の声が聞こえてくる。 「んんっ?」 声のした方へと向かってみると、 「待て!逃げんじゃねえ」
「やだやだっ、来ないで…」 「大人しくしてりゃ、高値で売ってやる」 ナイフを手にした盗賊が、フェアリーを襲っている光景を目の当たりにする。 (急いで助けなきゃ…) けれど、あんな鋭いナイフを持った奴に敵う力なんてもちろん無い。 ちょうどその時、すぐそばにぷるぷるとした物体が転がっていることに気づく。 ――確かこいつ、魔物使いたちに「ゼリー」とか呼ばれていたか?